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股関節センター長と膝関節センター長のインタビュー掲載について(1)
日本最大級の医療従事者専用サイト、m3.com <エムスリー>に股関節センター長と膝関節センター長のインタビューが掲載されました。第1回目のインタビュー記事をご紹介します。
【宮城】人工股関節手術件数は労災病院32施設中1位、人工膝関節手術も3位に-千葉大介・東北労災病院股関節センター長らに聞く
◆Vol.1
手術支援ロボット「ROSA」「Mako」を所有、股関節センター、膝関節センターを開設東北労災病院(仙台市)は2023年7月に「股関節センター」、2024年6月に「膝関節センター」を開設。手術支援ロボット「ROSA」を宮城県内で初導入して以降、急速に手術件数を伸ばしており、全国労災病院32施設の中で、2024年度の人工股関節置換手術件数は1位、人工膝関節置換手術件数も3位に躍り出た。股関節センター長の千葉大介氏と、膝関節センター長の國井知典氏に、両センターの特徴や開設の経緯、ロボット手術のメリットなどについて聞いた。(2025年9月29日インタビュー、計2回連載の1回目)
2023年10月「ROSA」を宮城県内で初導入
股関節センター、膝関節センターの特徴について教えてください。
千葉 股関節センターでは、年齢や病態を問わず股関節疾患全般をカバーしています。先天性股関節脱臼など小児の診療も含め、幅広い年代を対象に診療することを目標にしています。症例が多い変形性股関節症は、20~30代の活動性が高い患者には寛骨臼の骨切り術など関節温存ができる治療でまずアプローチし、高齢者の場合は人工股関節置換手術を適用するケースが多くあります。
股関節センターでは人工股関節置換手術の件数が最も多く、最小侵襲手術(MIS)を行っています。前外側アプローチにより筋肉や腱を可能な限り温存することで脱臼などの術後合併症を軽減し、入院期間の短縮と早期回復につなげています。
國井 膝疾患は、10代から高齢者まで、幅広い年代に発症します。膝関節鏡手術から人工膝関節置換手術まで、幅広く対応できる体制を整えています。膝関節センターでも低侵襲を採用し、術後の早期回復に取り組んでいます。
手術支援ロボットやナビゲーションを併用したコンピューターアシスト手術を積極的に取り入れて、低侵襲かつ精度の高い治療を患者さんに提供しています。

手術支援ロボット「ROSA」「Mako」をどちらも備えています。2種類のロボットを使うメリットは何ですか。
千葉 股関節と膝関節ともに使える手術支援ロボットはROSAとMakoの2種類があり、当院はどちらも所有しています。特に、人工股関節分野の手術に関して、ROSAとMakoをどちらも所有している施設は全国でも3カ所しかありません。先に導入したのはROSAで、宮城県内の病院で初めて導入し、2023年10月に運用をスタートしました。各メーカーの手術支援ロボットと人工関節は一体となっているので、「そのロボットを使う時は、そのメーカーの人工関節しか使えない」という制約ができてしまいます。ROSAは、股関節と膝関節ともに豊富な種類のインプラントを有しているメーカーの手術支援ロボットです。実際に患者さんの体内で何十年も使われるインプラントですから、患者さんごとに最も適したインプラントが選択できるように、選択肢が多いメーカーの手術支援ロボットであるROSAの導入を決めました。
手術支援ロボットを使う一番のメリットは、人工関節を設置する精度が上がり、術後脱臼など人工関節由来の合併症を抑えられることです。
國井 膝関節に関してROSAのメリットは、骨切り精度の正確さ、膝靭帯など軟部組織のバランス評価が可能である点が挙げられます。
ROSAだけでも患者さんの需要に一定程度応えることはできていたとは思うのですが、メーカーによって人工関節の形が微妙に違うことで、患者さんの膝の状態によっては合わないというケースが生じてしまいます。
そこで最近、Makoも導入に至り、人工関節の選択肢をさらに増やすことができました。Makoは膝関節の軟部組織を避けて骨のみを切るシステムが備えられており、出血が少ないため術後の痛みが抑えられ、リハビリも進みやすいという長所があると言われています。
世界的にもロボット手術は右肩上がりで成長しています。しかし、日本国内の人工膝関節置換手術の中で手術支援ロボットが使われているのは全体の7%ほどのようです。設備にもかなりのコストがかかり、手術件数が多い施設で、なんとかコストをまかなえている状況ですので、全ての施設に導入できるかと言えば難しいと思います。

手術支援ロボットROSA(病院提供)
人工関節手術数は右肩上がり、待機時間短縮に取り組む
2023年7月に股関節センター、2024 年 6 月に膝関節センターを開設した経緯について教えてください。
千葉 当院には以前、「人工関節センター」がありましたが、どこかの関節に特化していたわけではなく股関節も膝関節も一括りで診ていて、実際はあまりセンターとして機能していませんでした。当院の井樋栄二院長は、2021年まで東北大学整形外科の教授を務めていました。私も長年東北大学病院で股関節専門として診療に当たっていたので、井樋院長には大学病院時代からご指導いただいておりました。その股関節を専門としていた私が2023年4月に当院に赴任したことが、股関節センターを立ち上げるきっかけになりました。
もともと当院では股関節治療に力を入れており手術件数は多かったのですが、私が赴任後、手術件数が増加傾向になったことから、股関節手術に特化した医師・看護師・事務らのチームをつくり、患者さんをより安全に、より効率よく治療できるように特色を付けようというのがセンター化の狙いです。
國井 股関節に比べて、当院における膝関節の手術件数は少なく、膝関節を専門で診る先生も2021年に私が赴任するまでは長らく不在でした。しかし、膝関節の疾患も増加傾向にありましたし、先に開設した股関節センターが順調に運営できていたことから、膝関節センターも開設することになりました。
病院の経営戦略として、何を売りにして患者さんに集まってもらうかと考えた時に、センター化したほうが新しい取り組みをアピールしやすかったという意図もあるのではないかと思います。
ROSAの導入以降、手術件数の変化はありますか。
千葉 当院で実施した人工股関節置換手術は、2022年度は138件でしたが、ROSAを導入した2023年度は270件と倍増し、2024年度は約330件とさらに増えています。國井 人工膝関節置換手術も同様に増加しており、2022年度142件、2023年度162件、2024年度は約170件と右肩上がりです。
千葉 労働者健康安全機構(JOHAS)が運営する全国労災病院32施設の中で、当院の2024年度の人工股関節置換手 術件数は全国1位となりました。人工膝関節置換手術件数も3位になり、骨切り術や膝関節鏡手術も含めるとさらに上位に入ると思います。

股関節センター・膝関節センターの診療実績(病院提供)
センター運営に課題は感じていますか。
千葉 最大の課題は人員不足です。股関節センター専属の医師は私含めて2人です。そこに3人の整形外科専攻医にサポートに入ってもらい手術を行っていますが、人工股関節置換手術は半年待ちという状況です。痛くて困っている患者さんをなるべく待たせることなく手術を行うためには、専門の医師の増員が必要です。國井 膝関節センターも同様に専属医師は私1人で、人工膝関節置換手術は約8割を私が担当し、膝関節鏡手術は私が全例行っています。人工膝関節置換手術は3カ月ほど待っていただいている状況です。安全を最優先にしつつ、できるだけ多くの患者さんに手術を受けてもらえる体制にできればと考えています。
せっかく当院で良い医療を受けたいと来院してくれた患者さんに「そんなに待たされるんですか」と言われることもあり、期待に応えきれていないのは申し訳ないです。待機期間短縮に注力していきます。
◆千葉 大介(ちば・だいすけ)氏
2001年東京医科大学卒、東北大学病院整形外科医員。2001年岩手県立磐井病院、2004年国立病院機構仙台医療センターなどを経て2007年から2011年まで東北大学大学院医学系研究科博士課程。2011年から東北大学病院で高度救命救急センター助教、整形外科講師などを歴任し、2023年4月に東北労災病院整形外科下肢関節外科部長、同年7月から股関節センター長。
◆國井 知典(くにい・とものり)氏
2007年福島県立医科大学卒、仙台市立病院研修医。2009年東北大学入局、平鹿総合病院、 登米市立登米市民病院など。2014年仙台整形外科病院に着任し膝診療スタート。2021年に東北労災病院整形外科下肢関節外科第二部長、2024年6月から膝関節センター長。
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