宮城県仙台市の総合病院 独立行政法人労働者健康安全機構 東北労災病院(とうほくろうさいびょういん)

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膵・胆管合流異常症、先天性胆管拡張症

膵・胆管合流異常症

合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の奇形で、機能的に十二指腸乳頭括約筋・オディ筋の作用が合流部に及ばないため、膵液と胆汁の相互混入(逆流)が起こり、胆道ないし膵にいろいろな病変を引き起こし得るものと説明されます。

現在までに50例を超える経験があります。この逆流した膵液を混じた胆汁が胆道系を障害し、胆石形成、胆道感染、胆道上皮化生、胆道癌の発生に関係します。胆管拡張を伴わない例では胆嚢癌を高頻度に合併します。また、膵にも蛋白栓や膵石を生じやすく、急性膵炎や慢性膵炎を生じることがあります。

合流異常の発生頻度は、良性胆道疾患の手術例の約3%、胆管癌の約4%、胆嚢癌の約10%とされ、有意に悪性胆道疾患に頻度が高いです。また、小児の胆道外科領域では最も頻度の高い疾患であり、若・中年者の胆道癌でも合流異常の合併は有意に高いです。非手術例では、何らかの理由でERCPが行われた症例を対象としたものの中での発生頻度は2~3%、健常者を対象とした健診では0.03%です。

分類

肝外胆管の拡張形態から嚢腫状拡張(先天性胆道拡張症Ⅰ型を合併するもの)、紡錘状拡張、非拡張に分類したものがよく用いられます。また、胆道造影上の合流形式から主膵管が胆管に合流する膵管合流型(Ⅰ型)と胆管が主膵管に合流する胆管合流型(Ⅱ型)に分類したものも比較的よく用いられます。

症状

腹痛、黄疸、腫瘤触知、発熱、体重減少などがみられます。しかし、これらは合流異常に特有のものではなく、合併する病変(先天性胆道拡張症、急性膵炎、胆管炎、胆道癌)に応じた症状であります。

生化学検査

臨床症状と同様に本疾患特有の検査所見はありません。
超音波検査、腹部CT検査、先天性胆道拡張症Ⅰ型合併症では肝外胆管の拡張がみられます。
胆管拡張のない例では胆嚢壁のびまん性の肥厚がみられることが多いです。
胆嚢癌を合併する例では胆嚢壁の限局性肥厚、肝浸潤、肝内胆管拡張などがみられます。

超音波内視鏡検査

主膵管と総胆管が膵実質内で合流する像が得られます。合併症(胆道癌、胆石、膵石)の診断にも有用です。

胆道X線造影法

胆道X線造影法 診断には直接胆道造影で、膵管が異常に長い共通管をもって合流するか、明らかに異常な形で合流するか、膵管と胆管の合流部にOddi括約筋の影響がないことを証明する必要があります。

合流部にOddi括約筋の影響がないことの証明には、X線上のnotch(総胆管末端や主膵管末端のくびれ)の上方で膵管と胆管が合流するものをもって診断します。

ERCPの造影前に胆管胆汁を採取し、胆汁中アミラーゼの異常高値(1万IU/l以上)を証明することは補助診断として有用です。

合流異常の診断

合流異常の診断には、X線学的または解剖学的検索のいずれかで胆管と膵管の十二指腸壁外合流を証明する必要があります。通常はERCPで確定診断されるが、最近ではMRCPや超音波内視鏡検査(EUS)で診断されることもあります。

治療

治療は、先天性胆道拡張症を合併した膵胆管合流異常は先天性胆道拡張症の手術に準じます。胆管拡張のない合流異常では、胆嚢癌のハイリスクグループとして症状の有無にかかわらず手術が行われます。

この場合には腹腔鏡下胆嚢摘出術のみで、分流手術が行われないことが多いですが、この是非については議論があります。予後は胆嚢癌合併の有無、あるいは癌の進行度に左右されます。

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