東北労災病院臨床研修プログラム
1.研修プログラムの理念と目的
臨床研修とは、研修医が臨床医として必要な基本的診療知識・技能を修得し、医師としての望ましい態度、習慣そして考え方を身につける事にある。医師法第16条の2 第一項には、“医師としての人格を涵養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学および医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診察において頻繁に関わる負傷または疾病に適切に対応できるよう、基本的な診察能力を身につけることのできるものでなければならない”とある。これに則り当院の研修プログラムの目的は、個々の研修医が、内科、外科、救急科、麻酔科、小児科、産婦人科そして精神科のプライマリ・ケアから地域医療などの臨床を経て、通常みられる疾患に対処できる幅広い知識・臨床能力を修得し、多くの指導医から指導を受けながら日常の臨床の中で研鑚し経験を積み、臨床研修病院の指定基準に基づいた到達目標に達成することにある。
研修目標はこちら
2.各科研修プログラムの特徴
内科、外科、麻酔科、救急、小児科、産婦人科そして精神科において通常見られる疾患に対処できる幅広い知識、臨床能力を修得する。さらに希望によりプログラムにより指定された当院診療科、当院の協力型臨床研修病院、研修協力施設での研修を選択できる。選択科としては、総合診療科、呼吸器内科、循環器内科、糖尿病・内分泌・高血圧内科、腎臓内科、高血圧内科、心療内科、リハビリテーション科、外科、整形外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科、産婦人科、放射線科、救急科、病理診断科、保健・医療行政、脳血管内科がある。すべての研修について評価を行い、評価をフィードバックし研修を改善する態度を身につける。
詳しくはこちら
3.研修計画
- 研修期間は2年。所属は臨床研修センターとし臨床研修に専念する。
- 内科(24週、総合診療科4週を含む)・救急部門(12週)(※注)・外科(4週)・麻酔科(4週)(当院必修科目)、小児科(4週)・産婦人科(4週)・精神科(4週)・地域医療(4週)(必修科目)を研修し、残りの期間は選択科目を研修する。一般外来研修は内科、外科、小児科又は地域医療のブロック研修時に並行して行う。
(※)注:救急部門については1年次に当院救急科で4週、2年次に当院救急科または東北大学で8週の研修を行う。
年次 | 診療科 | 研修期間 | 研修内容 |
---|---|---|---|
1年目 (必修科目) |
内科 | 24週 | 東北労災病院内にて胃腸内科、肝臓科、循環器、呼吸器、糖尿病・代謝内科をローテーション |
外科 | 4~8週 | 東北労災病院内にて消化器外科、乳腺外科、大腸肛門外、呼吸器外科から選択してローテーション | |
麻酔科 | 4~8週 | 東北労災病院内における研修 | |
小児科 | 4週 | 東北労災病院内における研修。 | |
救急部門 | 4週 | 東北労災病院救急科における研修 | |
1年目 (選択科目) |
各診療科 | 8~12週 | 全科より自由に選択可能である |
2年目 (必修科目) |
産婦人科 | 4週 | 東北公済病院、横浜労災病院、仙台医療センター、 東北大学病院から選択して研修 |
精神科 | 4週 | 東北会病院で研修 | |
地域医療 | 4週 | 仙台往診クリニック、秋田労災病院、松田病院、富谷中央病院、たんぽぽクリニックから選択して研修 | |
救急部門 | 8週 | 当院救急科または東北大学での救急研修 | |
2年目 (選択科目) |
各診療科 保健・医療行政 |
28週 | 全科より自由に選択可能である。 広南病院での脳血管内科研修(4週以内)、保健・医療行政(4週)も選択できる。 |
2年目 (必修科目) |
一般外来 | 2年間で4週以上 | 内科・外科・小児科・地域医療のブロック研修時に並行実施。総合診療科は東北労災病院またはJCHO仙台病院にて研修。JCHO仙台病院での研修は2年次に2週間相当の10回実施し、残り2週間相当分は当院で実施する。 |
備考
- 内科:一年次は消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、糖尿病・内分泌・高血圧内科から選択することが望ましい。
- 外科:消化器外科、乳腺外科、呼吸器外科、大腸肛門外科から適宜選択。
なお、到達目標に未達成がある場合は、到達目標達成のために必要な診療科を割り当てることがある。 - 研修協力施設での研修は最大8週とする。
4.指導体制
1)研修管理委員会
委員会は、研修プログラムの作成、研修プログラム相互間の調整、研修医の管理及び研修医の採用・中断・修了の際の評価等臨床研修の実施の統括管理を行う。委員会の構成員は下記のとおりである。(2024年度委員)
- 委員長
- 成島 陽一外科部長
- 副委員長
- 小山 二郎総合診療科部長
- 委員
- 井樋 栄二院長
- 小島 晶子麻酔科第二部長
- 沼田 美香小児科第三部長
- 赤田 昌紀救急科部長
- 榊原 智博第二呼吸器内科部長
- 松谷 重恒第二脊椎外科部長
- 齋藤 匠第三外科部長
- 町田 知美心療内科副部長
- 半田 朋子消化器内科副部長
- 臨床研修医(2年次)
- 臨床研修医(1年次)
- 三澤 由美子看護副部長
- 竹内 満美子中央放射線部長
- 袰岩 靖子薬剤部主任
- 岩橋 隆之中央検査部主任
- 廣川 格彦事務局次長
- 岩崎 梢総務課長
- 阿部 彰彦研修担当
- 草苅 陽子医局秘書
- 外部有識者
- 綿谷 秀弥池田クリニック理事長
- 森川 昭正㈱メディカル・ブリエ代表取締役
- 協力型臨床研修病院の研修実施責任者
- 久志本 成樹東北大学病院
- 廣田 衛久東北医科薬科大学病院
- 新倉 仁仙台医療センター
- 田野口 孝二東北公済病院
- 金 仁東北会病院
- 藤原 悟広南病院
- 渡邉 崇地域医療機能推進機構 仙台病院
- 松永 竜也労働者健康安全機構 横浜労災病院
- 奥山 幸一郎労働者健康安全機構 秋田労災病院
- 臨床研修協力施設の指導責任者
- 川島 孝一郎仙台往診クリニック
- 松田 倫史医療法人松田会 松田病院
- 佐々木 修一医療法人盟陽会 富谷中央病院
- 松原 信行医療法人ならの社たんぽぽクリニック
- 荒井 由美子仙台市保健所長
- 鈴木 聡宮城県赤十字東北ブロック血液センター
2)プログラム責任者
プログラム責任者は、プログラム責任者養成講習会を受講した者とし次に掲げる事項等研修プログラムの企画立案及び実施の管理並びに研修医に対する助言、指導その他の援助を行う。
- ア.研修プログラムの原案を作成すること。
- イ.研修医ごとに臨床研修の目標の達成状況を把握し、研修プログラムにあらかじめ定められた研修期間の修了の時までに、すべての研修医が臨床研修の目標を達成できるよう、全研修期間を通じて研修医の指導を行うとともに、研修プログラムの調整を行うこと。
- ウ.研修プログラムにあらかじめ定められた研修期間の終了の際に、研修管理委員会に対して、研修医ごとに臨床研修の目標の達成状況を報告すること。
3)指導医
- ア.指導医は日常の臨床業務に従事する臨床経験7年以上の医師で、医師の臨床研修に係る指導医講習会を受講・修了した者で臨床研修管理員会が指名する。
- イ.研修プログラムに基づき直接研修医に対する指導を行う。また、研修医に対する評価を行いプログラム責任者に報告する。
4)上級医
臨床研修を修了した医師で、指導医に該当しない医師は上級医とし、研修医の診療に関する支援・指導を行う。
5)指導者
院内の研修関連部署の責任者(各看護師長、薬剤部部長、中央検査部部長、中央放射線部部長、栄養管理室室長、中央リハビリテーション部部長)は指導者とし、各部署での研修医への助言、援助、指導、評価(360度評価)を行う。
5.研修医の業務
研修医の業務(概略)
(1)勤務時間は原則として8時15分から17時までとする。ただし、受け持ち患者の状態あるいは救急患者の受け入れなどのために上記勤務時間外に診療にあたることがある。
(2)指導医のもとに、主として入院患者の担当医として診療を行う。一般外来研修では外来診察の指導医の指示に従い問診、診察を行う。
- 1)指導医の指示もしくは承認と確認のもと処方、検査入力指示を行うことができる。病棟スタッフ、各部署へ指示の伝達、正しく処理されたかを必ず確認すること。
- 2) 問診、バイタル確認等の情報収集は単独で行ってもよいが、患者プライバシー、会話内容については十分配慮すること。
- 3) 身体的診察を伴うときは、その内容により(非露出部の視触診など)、単独では行わず上級医、看護師と行うこと。ただし急変時の対応は直ちに処置を開始するとともに応援の要請、指導医 への報告を速やかに行うこと。
- 4) カルテ記載、各種文書の作成など遅滞なく行うとともに、指導医への確認・承認を必ず行うこと(詳細は医師業務マニュアルを参照)。
(3)月4回以内の日当直に勤務し、指導医の指示・管理のもとに時間外救急患者の初期診療にあたる(詳細は医師業務マニュアル、救急業務規程を参照)。日当直業務の割り振りは5-6日以上の間隔をあけて作成されているが、もし勤務日の交代をする場合も連日の業務とならないよう留意すること。
(4)病院全職員対象の研修・講習会には必ず参加し知識・技能の習得に務めること。
※ 医療安全講習、院内感染対策講習、接遇、診療報酬に関する講習など
(5)院内外で行われる教育に関する行事、研修中の診療科で行われる行事にも時間の許す限り、積極的に参加することが望ましい。
※ 定期的なカンファレンス: BLS講習、初期研修医向けセミナー、緩和ケア研修、キャンサーボード、救急症例検討会、CPC、研修医症例発表会、放射線読影セミナー、救急室勉強会
※ 各科当院内のカンファランス:イブニングカンファランス、肝疾患検討会、超音波検討会、各科合同カンファランス、術前検討会、ビデオカンファランスなど
6.臨床病理カンファランス(CPC)
- (1)東北労災病院では過去30年にわたり、剖検が数多くなされてきており、それらの臓器のマクロのカラースライドと臨床データを含むサマリーおよび病理診断書がきちんとファイルされている。その中には希有な症例や教育的な症例など、貴重な症例も多数ふくまれている。
- (2)同様に病理診断をされた症例も診断書と標本が完全に保存されており、過去に遡って病歴を知ることができる。
- (3)現在は隔月、年6回の割合でCPCが開かれているが、その際、研修生は基本的には自分の経験した症例の剖検例に関して、主治医の指導のもとに臨床的な診断の進め方や治療方針を学び、CPCでのプレゼンテーションを行う。最後に病理診断をふまえての臨床各科の医師と病理医の双方のディスカッションに参加して症例の反省をする。
7.研修の記録及び評価
- (1)研修の記録及び評価は「オンライン卒後臨床研修評価システム(EPOC2)」を使用する。
- (2)研修医はEPOC2に研修内容等を記録し、病歴や手術の要約を作成する。またEPOC2を用いて指導医、上級医、診療科・研修施設、研修プログラムを評価することができる。
- (3)指導医を始めとする医師及び医師以外の指導者は、分野・診療科ごとの研修期間終了の際に、研修目標の達成度を評価する(360度評価)。具体的な評価方法・詳細については、Bの3.到達度評価を参照。
- (4)プログラム責任者は、上記評価の結果を踏まえて少なくとも年2回をめどに研修医に対して形成的評価(フィードバック)を行う。そして研修医の目標到達状況を適宜把握し、研修医が終了時までに到達目標を達成できるように調整を行う。研修管理委員会に研修目標の達成状況を報告する。
- (5)病院長は、研修管理委員会が行う研修修了判定の結果を受けて、研修修了証を交付する。
- (6)研修管理委員会は、各研修医の研修に関する記録は研修修了、または中断した日から5年間、帳簿や電子媒体を用いて保管し、また委員会の議事録、資料などを管理する。保管は医局担当事務が日常的に管理し閲覧制限・医局外持ち出し禁止など情報の取り扱いには十分注意する。
8.研修の休止、中断、再開
(1)臨床研修の休止・中断
- ア.研修期間中に、疾病、妊娠・出産、育児、その他正当な理由で研修休止が必要になった場合は休日を除き、上限90日以内で研修の休止を認める。また病院長は必要に応じ研修期間の延長を認めることができる。
- イ.研修管理委員会は、重大な事由により研修の継続が困難である研修医に対して委員会での協議を経て当該研修医に対して研修の中断を勧告することができる。
- ウ.病院長は研修管理委員会の研修医の研修中断の報告を受けて速やかに「臨床研修中断証」を交付するとともに、研修管理委員会は県に臨床研修中断の報告を行う。
(2)研修の再開
研修を中断した研修医が、「臨床研修中断証」を添えて研修の再開を申し出た場合は、研修修了を満たすための必要な診療科・期間を確認し、研修を再開することがある。この場合「臨床研修再開の受け入れに係る履歴計画書」を作成し県に報告する。
(3)研修未修了
- ア.臨床研修管理委委員会の修了判定において臨床研修の修了基準を満たしていないと判定された場合、当該研修医、病院長、研修管理委員会との協議のもと研修未修了と判定される。
- イ.病院長は当該研修医に対し臨床研修未修了理由書をもって通知する。
- ウ.当該研修医は原則として引き続き同プログラムで研修を行う。
- エ.研修管理委員会は当該研修医の研修を継続させる前に「臨床研修の未修了者に係る履修計画表」を作成し県に報告する。
9.定員及び選抜基準
- (1)募集定員
- 10名
- (2)募集方法
- 公募(マッチングシステムを利用する)
- (3)採用方法
- ア)応募書類
(ア)臨床研修申込書兼履歴書 (イ)卒業(見込み)証明書 (ウ)成績証明書 - イ)選考方法
面接・小論文(選考日事前提出) - (4)募集及び選考の時期
- ア)募集時期 研修開始前年度6月上旬より
イ)選考日 同 8月上旬
※ 詳細日程・実施方法は 6月に公開する募集要項を確認ください。 - (5)研修開始時期
- 4月1日
10.研修医の処遇
- (1)常勤又は非常勤の別
- 常勤の嘱託職員として採用する。
- (2)研修手当、勤務時間及び休暇に関する事項
- ア)研修手当
1年次 300,000円(手当含まず) 440,000円程度(諸手当含む見込)
2年次 320,000円(手当含まず) 490,000円程度(諸手当含む見込) - イ)勤務時間
基本的な勤務時間は、月曜日~金曜日の8:15~17:00の8時間勤務(休憩時間45分)とする。 - ウ)休暇
休暇は、下記のとおりとする。
土曜日、日曜日、国民の祝日、有給休暇【雇用期間の初日を起算として、1年につき12日の年次有給休暇を受けることができる。】、夏季休暇(5日)、年末年始(12月29日~1月3日)、7月1日(健康と福祉の事業創立記念日) - エ)なお、研修期間中の一切の兼業(アルバイト)を禁止する。
- (3)時間外勤務及び当直に関する事項
- ア)時間外勤務
(ア)平日及び休日に時間外勤務を行う場合がある。
(イ)時間外勤務を行った場合は、労働基準法に準拠して割増賃金を支給する。 - イ)当直
・当直を月4回の範囲内で行う場合がある。
・当直を行った場合は、当院の給与規程に準拠して当直手当を支給する。
(4月分は見習い当直の為、5月分の当直(支払は6月給与時)より支給開始。) - (4)宿舎及び病院の個室の有無
- ア)宿舎
(ア)当院の近隣に宿舎を借り上げ、宿舎使用者より毎月一部負担金を徴収する。自ら居住するための民間等住宅を借りる場合は、住宅手当を支給(支給要件あり)する。
(イ)病院内の個室の有無については、病院内に研修医専用の個室を確保する。 - (5)社会保険・労働保険
- ア)公的医療保険
独立行政法人労働者健康安全機構の健康保険組合に加入する - イ)公的年金保険
厚生年金保険及び確定給付型企業年金(任意)に加入する。 - ウ)労働保険
労働者災害補償保険及び雇用保険に加入する。 - (6)健康管理
- 年1回健康診断を実施する。(電離放射線による被曝の可能性のあるものは年2回)
- (7)医師賠償責任保険
- 当院で加入する。
- (8)外部の研修活動
- ア)学会・研究会への参加 参加できる。
イ)参加費用の支給の有無 年1回参加費用を支給する。 - (9)図書、雑誌、インターネット等が利用できる環境
- ア)図書及び雑誌
国外雑誌 WEB9冊 - イ)インターネット等が利用できる環境
(1)UpToDate(電子医学・診療情報ツール)が利用できる。
(2)医学中央雑誌Web版 - ウ)医学教育用機材
(ア)医学教育用シミュレーターを利用できる。
11.研修プログラムに関する問い合わせ先
(1)研修プログラムに関する問い合わせ先
成島 陽一 委員長(プログラム責任者・外科部長)
〒981-8563 仙台市青葉区台原四丁目3番21号
Tel 022-275-1111 Fax 022-275-4431
研修担当
e-mail:
URL: https://www.tohokuh.johas.go.jp